ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

「本当？　よかった！」

部長と初めて昼休みに話すようになってから一週間。部長は料理が趣味で休日にはよく家族に腕を振る舞っているようで、色々とレシピやコツなどを教えてくれる。


私も昔からずっと料理が好きですっかり意気投合し、最近では昼休みが待ち遠しい。

今日の楽しかった昼休みのことを思い出すと、自然と口元が緩む。教えてもらって作った料理に舌鼓を打っていると、彼の視線に気づいた。

「どうしたの？」

ジッと見られている状況に耐え切れず聞くと、謙信くんは「いや？」と言いながら首を横に振った。

「ただ、最近のすみれ楽しそうだなって思って」

「そ……そう、かな？」

「あぁ、かなり。……ちょっと妬けるくらい」

「――え？」

や、妬けるくらい!?　それは一体どういう意味で……!?

目を見開く私に謙信くんは、可笑しそうにクスクスと笑いながら手を合わせた。

「ごちそうさまでした」

「あ……っ」

空になった食器を手にキッチンへ向かう謙信くんの後ろ姿を見ながら、私も残りのご飯を急いで口に運んでいく。