ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

それでも必死に跳ね手を伸ばす私に、謙信くんはニヤリと笑った。

「そういえばこれ、数日前からずっとあったよな？　すみれが買ったのか？」

「そ、そうなの！　あとで飲もうと思っていて……！　だからお願い、返して」

私が必死に手を伸ばしているのは、先日綾瀬さんに買ってもらったレモンティーだ。

「そんなに返してほしい？」

何度も首を縦に振るものの、謙信くんは返してくれる気配がない。

レモンティーを掲げたまま、私を見下ろす彼。なにか企んでいるかのような悪い顔に嫌な予感がする。

すると謙信くんはいきなり顔を近づけてきたものだから、思わずうしろにのけ反る。

「け、謙信くん……？」

ジリジリと詰め寄る彼に一歩、また一歩と後退りしていくと壁に追いやられ、行く手を阻まれた。

そんな私に再び彼は顔を近づけ、至近距離で言った。

「そんなに返してほしかったら、キス……してもいい？」

「え……えっ!?」

まさかの交換状態に一瞬フリーズしてしまうも、すぐに我に返り大きな声を上げた。

キスって……冗談でしょ!?