ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「言えよ、すみれ。……これ、誰にもらったのか」

余裕ない顔で言うと背中に腕を回され、いよいよ逃げられなくなる。

「えっ……あっ! まっ、待って謙信くん!」

このままでは本当にキスされる! 慌てて両手で彼の胸元を押し、叫ぶように言った。

「綾瀬さんなの! 綾瀬さんに買ってもらったの!」

「……は? 綾瀬さん? ってたしかすみれの教育係の……?」

「そう! 嬉しくてなかなか飲めなかったの!」

そこまで言うと彼は張り詰めていた糸が切れたように、ゆっくりと私から離れた。

「そっか。……俺はてっきり」

「え? なに?」

首を傾げる私に謙信くんの耳は、ほんのり赤く染まっていき、彼は恥ずかしそうに口元を手で覆った。

「謙信くん……?」

意外な姿に目を見開くと、彼は勢いよく私の身体を抱きしめた。

「わっ!?」

突然の抱擁にパニックになりジタバタする私の身体を、謙信くんはギュッと抱きしめる力を強めた。

「このままでいて。……今の俺の顔、すみれに見られたくないから」

ボソッと囁かれた言葉に、トクンとなる胸の鼓動。

ちょっと待って。もしかしてさっきのってヤキモチ……?
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