君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
なぜ、中途半端に優葉を想う和泉にあんな笑顔を向け………李人には、遠慮がちに微笑むだけなのか?
それを思った途端、李人の心は嫉妬と憤怒(ふんぬ)とで真っ黒に塗りつぶされた。
そしてーーー、気付けば和泉に言っていた。
"優葉の前から消えてくれ"
(昔から………優葉を深く想ってるのは
俺だけだ)
李人のその考えは今でも変わらない。
しかしーーー、李人が俳優として名を馳せるまで優葉と会わなかった間……….優葉と距離が開いていたのも事実だと思った。
中学生の頃は、思春期で男女関係に敏感な年頃でもあり、優葉は李人に対してよそよそしくなっていたもののそれは、仕方がないと李人は思っていた。
優葉がもう少し大人になり、男性と話すのにも慣れれば………それも無くなり、有名な俳優となった李人を男として見てくれるだろうと。
しかし、優葉は………李人でなく和泉に本当の笑顔を見せた。
それが、どうしても許せず優葉の唇を奪おうとし、和泉にも………。
「………ッ」
(影で瀬名に優葉の事を言うなんて………格好が悪いのはわかってる。 でも、どうしても瀬名には優葉から離れて欲しい)
「………橘さん? どうかしましたか?」
顔にしわをよせ、苦渋の表情を浮かべた李人を見て、記者が訝しげにそう尋ねる。