君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

「………いえ、何でもありません。 続きを始めましょう」

李人は、記者に対しいつものように穏やかな笑みを浮かべると、今まで考えてきた優葉と和泉の事を振り払うかのようにインタビューに集中し始めたーーー。



ーーーーーーーーーー

ーーー9月上旬

「………また来てない」

優葉は、はぁとため息を一つ漏らし隣の空いている生徒用の席を見つめた。
和泉が、ここ2週間、全く川野スクールに顔を出さなくなった。
理由は体調不良だと和泉の世話係の関本は言ったが流石に長すぎる。

来月には、大きなマーク式、記述式の模試が控えており優葉は、和泉になるべく川野スクールに来て欲しかったのだが………この有様だ。

「………大分、仲良くなれたと思ったんだけどなぁ」

(………瀬名君、よく笑ってくれるようになったし、少しずつだけど悩みのようなものも話してくれるようになって安心していたのに………。それとも他に何か事情があるのかな?)

そう思い始めた優葉は、和泉の事が心配になり瀬名邸に電話をかけようとした………その時だった。


「………ほら、行きなさい。 二度と仮病なんて使わないで頂戴」


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