君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「早くなさい」
和泉の母が、再度和泉にそう強く言った事で、やっと和泉は不機嫌そうな顔をしながら優葉の元へ来た。
「あなたが、この子の担当だったわね。お名前は何だったかしら?」
「笹原です。 笹原 優葉と申します」
「笹原さん。あなた、消極的そうだから言わせてもらいますけど、和泉は嫌な事があったら直ぐに投げ出すのよ。
ここ2週間、仮病を使ってこちらに来なかったのも学業が嫌になったから。
でも、この子は将来、父親の跡を継ぐので大学受験は絶対に失敗できないの。 だから、きちんと厳しく指導して頂戴。私はあまり埼玉にいる事ができませんので。 頼むわね?」
威圧的にそう上から目線で言う和泉の母に優葉は一瞬怯んだ。 しかし、ある言葉が優葉の中で引っかかり思わず言ってしまった。
「………分かりました。でも私は瀬名君が嫌な事を直ぐに投げ出す、とは思いません。出した宿題は完璧にこなしてくれる事が多いですし、テスト前にはきちんと分からなかった所を正解するまで粘り強く解いているので勉強も頑張ってます。だから………、瀬名君がここに来なかった理由は他にあると………私は思ってます」
優葉がこれまで見てきた和泉は、勉強は好きそうには見えなかったが大学受験の為に精一杯勉強に取り組んでいるように見えた。
なので、優葉は和泉のために思わず言ってしまったのだがーーー、 案の定、和泉の母は顔をしかめながら優葉を見ていた。