君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
『………分かりました。でも私は瀬名君が嫌な事を直ぐに投げ出す、とは思いません。出した宿題は完璧にこなしてくれる事が多いですし、テスト前にはきちんと分からなかった所を正解するまで粘り強く解いているので勉強も頑張ってます。だから………、瀬名君がここに来なかった理由は他にあると………私は思ってます』
ーーー優葉は、 穂奈美に対し力のある眼差しでそう言った。
その優葉の凛とした表情に………和泉は、一気に目を奪われたが、同時にどこか息のつまる思いをした。
(何だよ………?どうして………この女は、見た目は弱々しい小動物みたいなクセに………俺の核心をついた事を躊躇いも無く言う事ができるんだ………?
ーーーもっと、俺の心に鈍感なれよ?そうでないと俺は………)
そんな和泉の心の葛藤を他所に、穂奈美は和泉を優葉の担当から外せとクレームを言い出し、田倉まで巻き込む騒ぎになっていた。
そのような穂奈美の見るに耐えない態度とーーー心の中が、優葉に対する色々な堪え難い感情で混沌としていた和泉は、目の前の状況に苛々し始め、こう言っていた。
『………ねぇ。いい加減にしてくんない?』
『………要は、何があろうとアンタの言う通りに、ここで大人しく勉強しとけばいいんだろ? なのにそんなに大げさに騒がないでくれる? ウザくて堪んない。………それに、笹原先生は関係ないから』