君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
『へぇ、何が俺の為だっていうわけ?………将来、親父の跡を継ぐ俺が下手な事すれば、世襲で政治家をしてる身としたらマズイからでしょ?よくもそんな嘘が言えるよね? 全く反吐がでるよ』
『………和泉ッ!あなた母に向かって何て事を言うのよ!』
和泉の毒のある発言が図星だったらしく、穂奈美は顔を真っ赤にしながら、怒りのこもった目で和泉にそう叫んだ。
そのような穂奈美を和泉は意に返すことなく言葉を続けた。
『事実だからってムキにならないでくれる? 安心しなよ?ちゃんと親父の跡は継いでやるから。………でも決して、アンタや親父の為じゃない。………アイツの為だから』
和泉は、そう穂奈美に言い終わった途端ーーー"彼"を思い出していた。
"和泉。 俺はね、 社会的に弱い人が自分の足でしっかりと立てる手伝いをしたい。その為には政治家も一つの手段かもなって思ったんだ"
"俺は………何か間違っていたか? 和泉………"
曇りのない澄んだ綺麗な瞳で、将来を明るく語ってくれた"彼"も………、絶望に打ちひしがれ、涙をその目に流しながら和泉にしがみ付いてきた"彼"も。
和泉にとって、そのような"彼"の全てを思い出す事が………和泉の悟の跡を継ぐ、という唯一の原動力になっていた。
それをハッキリと和泉は穂奈美に認識をさせたかった。