君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
しかし、そのような事を優葉に口が裂けても言えるはずがなく、代わりに和泉は優葉に意地悪く微笑み、こう答えた。
『………教えてやんないよ?絶対にね』
『っ、はあっ!?』
『その方が、これから先もからかい甲斐があるし?』
それを聞いた優葉は、当然納得していなかったようで和泉に何かを言おうとした。
しかし、これ以上、優葉に追及されれば言い訳が無くなると思った和泉は優葉の言い分を遮ると、元々そのつもりだったので、優葉の話に付き合うと返事をした。
すると、その和泉の返答を聞いた優葉は、和泉がまさか承諾するとは思わなかったのか、大分驚いた様子だったがやがて、嬉しそうな声を上げた。
『………何が可笑しいんだか。 やっぱり、変な女』
思わず、いつもの調子でそう意地悪く言ってしまった和泉に構う事なく優葉は明るい満面の笑みでこう言った。
『いいの! 瀬名君と話せるのが嬉しいんだから』
それを見た和泉の心は………また一瞬にして目の前の優葉に鷲掴みにされた。
(………分かってる。 この女は、教師だ。 今の言葉だって………生徒の俺と話ができることで俺が心を開いていると分かったから口にしたんだ)
和泉は、そう自身に言い聞かせた。しかし………それでもどうしても心のどこかで願ってしまった。
(生徒としてじゃなく………俺自身と話す事を嬉しいと思ってくれたらいいのにーーー)