君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「………だから、消えてくれって頼んだんだ」
「………え?」
李人が、何かを低い声で小さく呟いたが、よく聞き取れなかった優葉は思わず聞き返した。
「………いや、何でもないよ」
そう言って、李人は優葉に微笑んだがやはりその表情は先程と変わらずーーー優葉の心に再び影を落とした。
「………ごめんね、李人君………」
そして、気付けば優葉は謝罪の言葉を李人に対し口にしていた。
「………優葉、 これはお前が謝ることじゃーーー」
「ッ、李人君でも………やっぱり嫌、だよね? 他の人に………生徒に、あんなことされた………私、なんてっ………」
そのままどんどん罪悪感の波にのみこまれた優葉は、李人の言葉も聞かず、涙ながらに自身の不安を李人にぶつけていた。
「ごめ、んなさいっ………」
(駄目だ………。李人君の気持ちを信じると決めたのに。
瀬名君との事を、知って怒った風な李人君を見たら、もうーーー………)
ーーーその時だった。
「………ッ!!」
「だからッ………。 謝るなってッ………!」
優葉は、再び李人に強く引き寄せられていたーーー。
「っ、李人く………」
「………確かにね、心の底からムカついてるよ。そして、今の俺は冷静じゃない。当たり前だろ?ずっと、好きだった女が、そんな形であんなガキにキスをされてるって分かってムカついて、ムカついて………どうしようもないよ。
俺よりも先に優葉にキスしたあの、すましたガキの顔をめちゃくちゃにぶん殴ってやりたくなる。……… 目の前にいたら、確実にしてるだろうね?
………いや、それ以上の事をしてるよ」