君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
行為が終わり疲れ果て、 女性が隣で意識を失うとーーー和泉は直ぐに服を着た。
そして、女性に何も言うこともなく部屋を出、残暑が残る夜空の中を歩き始める。
(もう………さっきの女とも会うことはないだろう)
和泉は、そう思い深く重いため息をついた。
ーーーいつも、こうだ。
あの出来事から優葉への想いを忘れたくなった和泉は複数の女性と関係を持った。
しかし、和泉がいつもその相手として選ぶのはーーー少しでも優葉と同じ髪型をしていたり、 雰囲気がどこか似ている女性ばかり。
そして、和泉は身体を重ねる時も………相手の姿から何か一つ多くでも優葉を思い出せるものは無いのかと無意識のうちに探してしまい、相手の声もその妨げになるので、封じてしまう。
しかし結局、最後には優葉と重なるものなんて何一つ無かったのだと知り急激に虚しくなる。
「………ったく、 矛盾してるよ………」
和泉は、 弱々しい震えた声でそう呟いた。
ーーー優葉を忘れるために他の女性と身体を重ねているはずなのに。
結局、いつも相手に優葉の姿を投影しようとする。 そして、それが出来るわけがないと気付き、また深い暗闇に落ちるような感覚になる。
「………本当に、 笑えるんだけど」
(あの日から………何も変わっていない。結局、 俺は今も………強く縛られたままだ………)