君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
ここには"彼"が静かに眠っている。
和泉は、 一週間に一度、 誰に言うこともなくここに来ている。
ーーー"彼"が眠るこの墓に。
『ーーーあの人は、俺の全てだったんだ………。 和泉』
ふと、また思い出したのは………"彼"が、 いなくなる前に涙ながらに和泉に言った言葉。
(………どうして、 そんなにも苦しむようになるまでに一人の人間を想えるのかと思っていた。
自分さえしっかりしていれば………いくらでも、 自分の意思で抑えが効いたんじゃないかとさえ思った)
和泉は、心の中で静かな口調で"彼"に語りかけていたが、やがて苦しげな表情を浮かべた。
(けど………、違った。俺はただ、知らないだけだった。
本当に、人を好きになるという意味を。
ーーー………本当に、 人を想ってしまえば、その時点でもう何もかも引き返せなくなる。
そうだよな………。 こんな強くて、どうしようもない気持ちを制御なんて出来るわけがない………)
「………ッ、本当………こんな気持ち、どうしたらいいんだよ? どう決着つけたらいいんだよッ………?」
和泉は、そう胸の内を吐き出すと"彼"がいる墓碑の前で力無く跪いたーーー。