君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「………もしかして、 和泉?」
ーーーその時、 背後から女の声がし、 和泉は驚き、勢いよく振り返った。
「………やっぱり和泉だ!」
そう言い、 女性は嬉しそうに大きく笑った。
凛とした美しい佇まいに、 ウェーブのかかった長い黒髪。 小顔だが黒目の多い猫目の目とシュッとした眉が特徴的だ。
そして、紅唐色の縦のストライプが入った白のワイドパンツに、胸元にタイがついた白いブラウスをつけている。
和泉はその女性に見覚えがあった。
「………有華さん?」
咲山 有華(さきやま ゆうか)。 26歳。
彼女は、 和泉の母方の妹の娘で、 和泉の従姉妹だ。
実家は、 埼玉で不動産や住宅、携帯電話等の代理店を営む地元では有名な商社である。
しかし、有華は国会議員を目指しており、4年前に東京の大学を卒業した後、与党の職員として働いている。
「また、大きくなったねぇ! 和泉! しかも、更にイケメンになって! 有華おお姉ちゃんは嬉しいわ〜!
こんなにイケメンなら、 ジョニーズ事務所にでも入れるんじゃない? お姉ちゃん、書類送ってあげよっか?」
「………いきなりふざけないでよ、アンタ」