君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

有華が和泉を連れて来たのは、 まだ和泉達が幼い頃によく親戚一同で来ていた喫茶店だった。

レトロな店内は、 ヨーロッパからのアンティーク小物や家具が沢山置いてあり、とても居心地の良い空間だ。

「うちの親戚一同って、 食には人の何倍も煩いのに、ここの喫茶店のメニューはとても気に入ってたわよね。
あぁ、懐かしい!何にしようかな〜? 和泉は、ビーフシチュー? ここの好きでしょ?」

「………つーか、 何? 俺に何の用な訳?」

和泉は、メニューを浮き足立って見つめる有華に訝しげにそう尋ねた。

「………"あれ"から、4年。 ちょうど節目だ。俺も、来年、高校を卒業し、アンタも国政選挙に出れる年齢になった。
けど、お生憎様。 俺は父を心底嫌ってるけど、父の地盤をアンタに譲る気はない。 だから諦めーーー」

「ち、ちょっと待った! 和泉! 何、妄想で事を語ってんのよ!
この私が、アンタに賄賂でも渡して、 おじさまの跡を引くようにとでも言うと思ったわけ!?」

「は?違うなら、何?」

政治家志望で、昔から野心のある有華が和泉に話があるとすれば、それしかないと思った和泉は有華の反応に首を傾げた。

「これは、重症ね。 本当に………。もっと早く帰ってくるべきだったわ」

そして、そんな和泉を見、 有華は重い溜息をついた………。


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