君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

「いい? 確かに、 おじさまの固い地盤は喉から手が出るほど欲しいわ。 正直言って、今もよ。
ーーーでもね、 私は正々堂々とそれをおじさまに言うわ。 そして、和泉と勝負するわよ。従兄弟だからって容赦しない」

そう言い、有華はその目を鋭く変え、和泉を見据えた。
その目を見、和泉は思い出した。

有華は、昔から勉強やスポーツ、習い事………それに対し相手が男性や上級生でも負けじと自分の目標の為なら正々堂々とぶつかっていき、結果を出していた。

その美しさとは裏腹に、まるでサバンナに生きるライオンのような強さを持った女性。

それが、和泉にとっての有華だった。なので、政治や経営の世界に身を置き、 狡猾さや自身の保身ばかりを考える親戚一同の中で、有華は和泉にとって、唯一信頼のおける存在だったのである。

(………どうして忘れてたんだ、俺は)

「………ごめん。 俺が、どうかしてた」

そう思えば、和泉は一気に有華に対し、申し訳なく思い頭を下げる。
その姿を目にした有華は、ため息と共に笑みを浮かべた。

「………少しは目が覚めたみたいね。 いいわ! 和泉のイケメンっぷりに免じて許してあげる!」



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