君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

田倉の問いに対し、 優葉はハッと息を呑んだ。

(そうだ。 瀬名君は確かに私に心を開いてくれていた………。後ろ向きになっていたらダメだ………。瀬名君と向き合うって決めたから)

そう思い、優葉は考えを巡らせた。

(瀬名君が行きそうな所………)

その時ーーー優葉が、思いついたのは………たったひとつの場所。

和泉が心の拠り所にし、そして今も和泉を光の刺さない深い闇の中に閉じ込めている場所………。

R町にいくつかその場所はあるため………手当たり次第、当たってみるしかない。

「………塾長、 瀬名君の件は私に任せてくれませんか? 思い当たる場所があるんです」

『え? でも………笹原さんは今、インターン中でしょ? だから場所さえ言ってくれれば僕がそこに行ってみてーーー』

「いえ。 私が行きます。私に任せてください。 ………瀬名君の先生は私ですから」

和泉の先生としても………これからの優葉の夢のためにも、優葉は和泉と真正面から向き合いその心と対峙すると決めた。

そして、李人もその優葉の決断を応援し、支えてくれようとしている。

ーーー教師として、和泉の心を………明るく照らす事を諦めたくない。

ーーー大好きな李人の支えを………無駄にしたくない。

そう思った優葉の言葉は力強く、迷いなど一つもなかった。
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