君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

そう言い、 切なげに瞳を揺らす李人を見て………優葉の心は強く揺さぶられた。

(李人君は分かってるんだ。 今、 私が李人君の元にいるよりも………瀬名君の所に行きたい事を。 だから………)

「………なんてね」

すると、李人は優葉の身体をゆっくりと起こすと………フッとどこか寂しげに微笑し優葉を抱きしめた。

「………分かってるよ。 優葉の俺に対する気持ちは、よく分かってる。 そして、 瀬名の元に行く事でお前が夢に向かってまた歩める事も」

「李人君………」

「ただ………それでも、俺はもうお前に対して我慢しないって決めたから。 だから………さっきの言葉はあながち間違ってはないよ?」

そう言い、 李人はもう一度優葉の唇に啄むようなキスをした。

「………だから、めちゃくちゃ妬けるけど。 優葉の為だから、 頑張って見送る事にするよ。 けして、アイツの為じゃない。
ーーーけど、次に会う時は………もう二度と、 他の男に会う為にここから出て行っちゃダメだからね?」

「うん………。約束する」

「よし」

優葉がそう言えば………李人は優葉の頭を軽く撫でた後、優葉をゆっくりと離した。

「………気を付けて行っておいで」


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