君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
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"優葉に話があるから………聞いて欲しい"
和泉に抱き締められた後、そう言われた優葉は和泉と一旦、場所を移動することにした。
そして、近くにあったログベンチに隣同士で腰掛ける。
「………瀬名君。話って何………?」
そう優葉が、問いただせばーーー和泉は、今までに優葉が見たこともない程、真摯で澄んだ瞳で優葉を見つめた。
その瞳があまりにも綺麗でまた優葉は、思わず目を奪われてしまう。
(この子………、こんな目をする子だったの………?)
そう心中で、驚いている優葉を知ってか知らずか和泉は口を開いた。
「………優葉に言いたい事は、二つある。 一つ目は、ずっと俺が抱えてきた事。 そして二つ目は………どうしても、優葉に伝えたい事」
「………うん」
「………まずは、一つ目から話させて」
そう言い、和泉はその美しい唇をゆっくりと開きーーー静かに、話し始めた。
和泉が今まで昏い心と共に抱えてきた………過去の記憶を。
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代々、世襲で政治家を生業としている瀬名家にはかつて二人の子どもがいた。
一人目は、 瀬名家次男である和泉。
そして二人目は
『ーーー櫂(かい)兄ちゃん!』
和泉よりも 5歳年上の長男、瀬名 櫂(せな かい)であったーーー。