君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

幼い頃から、友人と遊ぶ日も惜しみ、父と母に言われた通りに家庭教師と共に勉強をしていた和泉。

だが、 いくら勉強をしても全教科で100点でも取らない限り、和泉の両親は共に和泉を責め続けた。

そして、 幼い頃から和泉と櫂は両親に父の跡を継ぐ準備をするよう言われ続けていた。

しかし、和泉はこの頃から父の生業である政治家になる事の意味を徐々に知るようになり、それに対し、拒否感を持つようになった。

国民の代表として国民の意見を反映させると言えば聞こえはいいもののーーーその実態は、 沢山の駆け引きの中で日々、自分の地位獲得のための裏切りがあったり、 自身が支持する意見を押し通す為、人を騙したり、利用したりする。

それが、和泉の見た父の姿だった。

そのため、政治家という仕事のどの部分に希望を持って、勉強をし続ければいいのか和泉には分からなかった。

なので、そんな環境下の中で、 勉強を続けることは小学生の和泉にとっては酷すぎる状況であった。

『大体………俺、 "政治家"になんてなりたくない。 あんなに、沢山の人に嫌な思いをさせて、自分の気持ちだけを押し通す仕事なんて………嫌だ。だから、いくら勉強したってもう辛いだけだ………』

『和泉………』


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