君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
初めて、 吐露した自身の本音。 それを聞いた櫂は、暫く黙っていたが、やがて口を開いた。
『………じゃあ、 ならなければいいよ。 政治家に』
『えっ………?』
和泉は櫂の言葉に驚き伏せていた顔を上げた。 そんな和泉を見、 櫂は穏やかに微笑んだ。
『政治家にならない………? そんな事、できるの?』
『もちろん。 だって、もう一人候補がいるだろ? ここに』
そう言い、櫂が指を差したのはーーー、他でもない櫂自身であった。
『っ、 櫂兄ちゃん………。でも、櫂兄ちゃんも他にやりたい事とかあるんじゃ………』
『うーーーん。 そうだね。 でも、俺のやりたい事は、政治家でも出来るんだよ』
『え、ほんと………?』
『うん、ほんと』
思わぬ櫂の発言に驚きと希望が混じり合った感情の中で目を大きくさせた和泉を見、櫂はまた明るく笑った。
『和泉。 俺はね、 社会的に弱い人が自分の足でしっかりと立てる手伝いをしたい。その為には政治家も一つの手段かもなって思ったんだ』
『しゃかいてきによわいひと?』
『そうか、和泉にはまだ難しいか………。
まあ、皆ではないけど。お年寄りや女の人、身体や心が不自由な人なんかを"しゃかいてきによわいひと"って言う。
つまり、何かの理由があって他の人よりも幸せになるためにどうしても時間がかかってしまう人達の事だよ』