君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

次第に櫂は志帆に対しーーー恋情を抱くようになった。

『ーーー俺、 あの人が好きなんだ。 ………教師だって分かってても気持ちを抑えられないよ』

和泉が、中学一年生で櫂が高校三年生の年だった。

酷暑と言われていた夏が終わりーーー秋の訪れが間近に迫っていたある午後の昼下がり。

溜息の数が多くなっていた櫂に対し、和泉が声をかけた事がきっかけで………櫂はその胸の内を明かした。

『………え? 好き??』

思いもよらなかった櫂の発言に、和泉は思わず、素っ頓狂な声をだしそう言っていた。

そんな和泉を見、 櫂は少し切なげに微笑んだ。

『………そうか。 そうだよね。 和泉はまだ、人を好きになった事が無いんだよね』

『え………』

そう言われ、 和泉は頭を巡らせた。

和泉は同級生の男子達が、結構な頻度でどの女子が可愛いだの、 あの女子と付き合いたいだの言っているのを聞いた事はあった。

そして、和泉自身もこの頃から同級生、上級生問わず告白をされる事が多くなっていた。

しかし、実際に特定の誰かをそのような感情を持って見たことは無かった為ーーー、 和泉は櫂の発言がイマイチ頭に入らなかったのである。

『………そうかも。ゴメン、櫂兄さん。 俺、 何の力にもなれない………』


< 239 / 660 >

この作品をシェア

pagetop