君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

和泉が力無くそう言うと、櫂は"大丈夫だ"と穏やかに微笑んだ。

『和泉にもきっと分かる日がくる。 だから、そんなに落ち込まないでいいよ。 気持ちを聞いてくれただけで嬉しいし、気が楽になった。
………それに恋ってのは、焦ってするものじゃない』

『櫂兄さん………』

『和泉が日々を過ごす中で………本当に大切だって思う人が必ずできる。
そして、その人に………時に立場なんて関係なくその気持ちを伝えたい、幸せにしたいと思う時が来る。
その全部が恋で、本当に自然と生まれるものなんだ。だからそれまで待つしかない』

『へぇ………。 なんか、凄いな。 でも』

『でも?』

『いや………自分の感情なのにコントロール出来ないなんて………そこが、不思議だと思って』

和泉がそう訝しげに言えば、櫂は可笑しそうに大きく笑った。

『アハハ、 そうきたか………! なんか、冷静な解釈で和泉らしいな』

『俺、可笑しな事言った?』

『いや………和泉らしくて良いよ。 だからツボった。 ハハッ』

『てか、笑いすぎじゃない? 櫂兄さん………』

和泉はそう言い呆れたようにため息をついた。

しかし、先程まで深く眉間に皺を刻んで重たい表情をしていた櫂が明るく笑ったのを見て、嬉しくもなった。

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