君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

『………楽しみだな』

櫂はひとしきり笑った後、 そう言った。

『え?』

『和泉のその冷静さを崩す子だよ。……… きっと、 その子が和泉の初恋だ。 一体どんな子を好きになるんだろうな、和泉は?楽しみだ』

『………全く想像つかないけどね』

『大丈夫。 和泉ならきっと、 いい人を好きになれる。
………けど、俺は、和泉より先に好きな人と向き合ってみるよ』

そう言い、真剣な眼差しを和泉に向けた櫂の姿を、その後、和泉は忘れる事は無かったーーー。

ーーーーーーーーーー

ーーーそして、また暫く経ち冬が本格的に始まり、櫂の受験が一通り落ち着いた時だった。

『和泉! 和泉! 聞いてくれ!』

櫂は、興奮した表情で………突如、和泉の部屋に入ってきた。

『どうしたんだよ? そんなに慌てて………』

『多原先生と付き合う事になった!』

『………は!?』

そして、またあまりにも突然の櫂の報告に、和泉は自身の耳を疑った。

『付き合うって………本当に?』

『ああ。先週、 思い切って手紙を送って告白したんだ。そしたら多原先生が今日、手紙を渡してくれて………同じ気持ちだったって言ってくれた。俺………今、とても幸せだよ』

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