君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

和泉は、逃げるように自身の部屋に戻った。 瀬名家は、鉄筋コンクリート造の為、 防音性は高い。

和泉は、 それをこの日ほど感謝した事は無かった。

『っ、ふざけてるっ………。どいつも、こいつもっ………』

その和泉の失望に溢れた声は、深い春の夜に紛れていったーーー。


ーーーーーーーーーー

ーーー翌日

『………櫂兄さん』

部屋で、 予備校に通おうと準備を進めていた櫂に和泉は声をかけた。

『和泉、 おはよう。 どうした?』

いつもと変わりなく、 和泉に笑顔を向ける櫂。

まるで、昨日の志帆との出来事など何も無かったかのように。
そして、和泉の電話なども無かったかのようにーーー。

(何が、どうした………だよ)

和泉は、そんな櫂を見、 怒りがふつふつと湧き上がるのを感じた。

『………兄さん。 昨日、何してたの? 俺、何回も電話かけたよね?』

『っ、ああ………。 ごめん。 少し、具合が悪くて………部屋で休んでたんだ』

罰が悪そうに、そう言う櫂に………和泉の怒りの沸点はプツンと切れ、弾けだした。

『ふざけるな!! そんなデタラメつきやがって!!』

『っ、 和泉………っ?』

『多原だろ!! 多原とヤる事に夢中で、俺の事なんて忘れてただけだろ!?』

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