君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

『まさか………、 俺があんな事を言ったから………?』

和泉は、部屋に戻った後、そう震えた声で呟いていた。

櫂が事故にあった現場は、見通しの良い道路で、車通りもそんなに多くはない。

なので、そのような場所で、土地勘のある櫂が人身事故にあう方が不自然だった。

そして、和泉が思い出したのは先日、和泉が櫂に浴びせた罵詈雑言の数々。

責任感が強く、優しい櫂は、ひょっとすれば和泉が言った言葉の数々に対して必要以上に傷付き、気負ってしまったのかもしれないと考えた。

『俺は………っ』

(とんでもない事を………してしまったのかもしれない………)

そうすれば最後、一気に罪悪感の波が和泉の胸に押し寄せた。

そして、気が付けば和泉は次の授業の事を忘れ、 櫂のいる病院へ行こうと部屋を飛び出そうとしたがーーー

『………ッ』

ーーー和泉は、 ドアノブに手を掛けた直後、その足を止めた。

『どんな顔をして………向き合えば良いんだよ………』

いつも、和泉の事を理解し、支えてくれた櫂。

政治家になるという瀬名家に生まれたからには、抗えなかった運命に苦しんでた和泉をーーー、自ら背負い、自由をくれた櫂。

櫂は、自身が政治家になりたいからだと言っていたが………櫂の事だ。

きっと、和泉をそのしがらみから逃す為に………自身で全て背負って、政治家になる決断をしたのかもしれない。

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