君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

【愛を重ねたいのは、ただ君だけ】


ーーー10月初旬

「良かった、晴れて。 絶好のみかん狩り日和だ。ーーーな、優葉」

「………う、うんっ」

約束通り優葉は、李人とみかん狩りに来ていた。

空はよく晴れておりみかんの木々が程良く日光に照らされている。

そして、多くの家族連れや子供達が嬉々としてビニール袋を持ち、 みかん狩りを楽しんでいた。

優葉が、幼い頃、李人と来た時と何ら変わらない光景。

本来は、その変わらない思い出の場所に李人と来れた事に優葉は、胸を弾ませるのだが………

「………どうしかした? 優葉」

「えっ」

「あんまり、元気が無いな」

李人にそう問われる位、優葉は上の空の事が多かった。

「………っ、えっと」

言葉に詰まった優葉を見た李人は、軽くため息をつくとーーー突然、優葉のおでこに自身のそれをくっ付けた。

「………風邪でも引いた?」

「ーーーッ!!」

「………あ。 めっちゃ、熱くなった」

そう言い、李人は悪戯めいた瞳をし微笑む。


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