君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
それが、優葉にとって和泉との事を話す何よりの励みになった。
「ありがとう………」
そして、優葉は李人に和泉の過去を話し始めた。
和泉に櫂という兄がおり、 その兄の死がきっかけで和泉が人を信じられなくなり、恋愛も夢も何もかも諦めていた事。
その和泉の昏い過去はーーー李人を絶句させるには充分だった。
「そんな事が………」
(だから………アイツはあんなにも優葉への気持ちを頑なに拒否していたのか)
李人は、 和泉が優葉への想いを認めなかった理由がやっと腑に落ちた気がした。
「………最初から、影があった子だったの。 いつも笑わないし、やけに噛み付いてくるし………。だから私は、先生として瀬名君をずっとほっとけなかった………」
「そうか………。 そうだな」
李人は、気が付けばそう同意していた。
ーーー教師としての優葉は、李人が思った以上に強く、頼もしかった。
先程の優葉の振る舞いを見て李人はそうひしひしと感じていた。
いつも李人の前で柔らかく微笑む、優しい優葉とはまた違う。