君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
6. 決めた心、 裏切りの足音

【和泉の決意】


ーーー11月中旬。

秋風が涼しくなり、 町の風景も橙色に明るく染まっている頃。

(………どうするかな)

和泉は、教室の窓からゆらりと校庭に咲き誇る赤や黄色の色彩鮮やかな紅葉が、落葉するのをぼんやりと見ながら悩んだ。

優葉に、自分の想いを伝えた日から和泉にはずっと悩んでいる事があった。

それはーーー、来年以降の進路だ。

この18年間、和泉は一度たりとも進路に迷った事など無かった。

幼い頃から、進学先は、両親に既に決められていた。

櫂がいなくなってからは、政治家になる事しか考えていなかった為、東京にある名門私大の政経学部に行くつもりだった。

しかしーーー

「………約束、 したからな」

(本当に自分のやりたい事を見つけて………、 信用できる人間も作って。 幸せになると)

ーーーそう、優葉と約束したのだ。


優葉との約束だけは、破るわけにはいかない。


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