君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「………どうして、って?」
「………!!」
優葉は不意うちで、その右手を和泉に掴まれた。
「………今更、そんな事を聞くの? 先生」
「………っ!!」
和泉の熱を帯びた瞳を見せられ、優葉はその場から動けなくなった。
そして和泉は、その瞳のまま優葉に近付くと、そっと包み込むように彼女を抱きしめた。
まるで、今まで必死に押さえ込んできた優葉の心を慈しむような………優しい抱擁だった。
「せ、なく………」
その腕の温かさを直に感じた優葉は、和泉を拒否できなかった。
離れなければならないと。
この和泉との距離は、李人に顔向けできるものでないと。
どう考えても、生徒であった相手と取る距離でないと。
そう分かっていても………その想いに目を背けられなかったーーー。
「………そんなに難しい問題だったなら、もう一度教えてあげる。
笹原 優葉。 ーーー彼女が俺にとって、唯一の大切な女だからだよ。
誰か………分かるよね、先生? 簡単でしょ?」
和泉は優葉の耳元で、そう囁いた。