君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

「………ん」

「………え」

「申し訳………ありません………」

そこにいるのは、すっかり憔悴しきり、背を縮こませ、頭を下げる李人だった。

いや。 こんなに自信を無くし、 瞳に絶望感のみを漂わせる男を"橘 李人"と言っていいのか………。

斉木は、その姿に耐えられず胸を痛めた。 

ーーー李人は今、狭間にいるに違いない。


俳優として、これからも有り続けるか。


それとも優葉と純愛を貫くか。


どちらも、そのままい続けるなど出来はしない。 

俳優でい続けるのも、従姉妹である優葉との愛を通し続けることも究極の場所に存在するのだから。


あまりに極端だからこそ、歪みが生まれる。

(………確かに、優葉さんは李人にとってこの上ない大切な存在だ。 彼女への想いがあるからこそ、仕事を頑張れたところもあるだろう………が)


斉木は、そこでもう一度思い出した。 
李人をスカウトしてから今まで、俳優 "橘 李人"が育ってきた日々を。 

李人が人気絶頂になるまで、酸いも甘いも経験した時間を。



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