君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー


ーーーそれだけは、 けしてしてはならなかった。 

いや、今までにだって一度も優葉を傷つけたことなどなかった。

これからも………そのつもりだった。 そうしない自信もあった。

(なのに………)

李人は、もう一度強く唇を噛み締めた。 わずかに鉄の味が口内に広がった。 


「ですから、橘の件は後ほど発表させていただくと………」

「お願いします! もう少しだけ待ってください!橘は皆さまを失望させることはけしてしません!」

その時、まだまだ、鳴り響く電話やメールに対応するスタッフの声がまた李人に聞こえてきた。

(このままじゃ………、今まで築いた俳優としての力も。 俺が俳優であるために必死で闘ってくれているスタッフも………優葉も。 全部を後戻りできないほどに傷つけてしまう)

そして、何よりも………


"ーーー李人君!"

そういつも李人に笑ってくれる、 優葉の笑顔をけして奪ってはならないーーー。






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