君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

『正直、アイツの事情なんてどうだっていい。 
………ただ、先生がアイツを一番に望んでいるから、俺はそれを叶えてあげたい。 
少しでも元気にしたい。………それは俺にはできないから』

そう言い和泉は、悔しげに拳を握りしめた。

ーーー優葉を、完全に元気にしたいのにそれができない。 

その和泉のもどかしさや憤りが小春にはひしひしと伝わってきた。 

(確かに今、優葉が一番望んでいるのは李人君かもしれない。 だけど………)

『………瀬名君』

『はい』

『そんなに卑屈になる必要ないわ。少なくとも私は………あなたは、李人君にも私にも出来なかった形で今優葉を救おうとしていると………そう思うの。 長年、一緒にいる私たちができなかったことよ。 それってすごいことだと思うの』

『え………?』

小春の言葉の意味が分からず、和泉は訝しげな表情を浮かべた。

そんな和泉を見、小春は微笑んだ。

『………今に分かるわ』




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