君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
(何だよ、この女………)
逃げたりも泣いたりもせず、ただ和泉と向き合う為に優葉は今、和泉の唇を待っている。
そんな優葉の姿は、和泉の調子を狂わせた。
「………馬鹿じゃないの」
気が付けば、和泉はゆっくりと優葉をその腕から離した。
「せ、瀬名君………?」
「………冗談に決まってるだろ。 教師の癖に、そんな事も分かんないの?」
「なっ、でも………泣いてた理由を教えてくれるって言ったから私っ………」
そこで優葉は言葉を詰まらせた。
和泉に抱き寄せられ、キスをされると思い、覚悟を決めたその時までの緊張が一気にほぐれた。
不意に涙が溢れそうになる。
和泉に不意に抱き寄せられ、優葉はとても怖かった。
しかし和泉に対し、応える態度を示せば、彼も心を開いて、何に苦しんでいたのか教えて貰えるのではないかと思い、賭けに出た。
(生徒の前で泣きたくないのに………)
必死に、 優葉は溢れそうな涙を堪えた。
その姿を見た和泉は少しだけその表情を悲痛な風に歪め、ため息をついた。
「………ったく。 本当に面倒くさい女! 泣くなよ、 教師のくせに」
「な、泣いてなんかっ………! 大体、誰のせいだとーーー」