君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー


(何だよ、この女………)

逃げたりも泣いたりもせず、ただ和泉と向き合う為に優葉は今、和泉の唇を待っている。

そんな優葉の姿は、和泉の調子を狂わせた。

「………馬鹿じゃないの」

気が付けば、和泉はゆっくりと優葉をその腕から離した。

「せ、瀬名君………?」

「………冗談に決まってるだろ。 教師の癖に、そんな事も分かんないの?」

「なっ、でも………泣いてた理由を教えてくれるって言ったから私っ………」

そこで優葉は言葉を詰まらせた。

和泉に抱き寄せられ、キスをされると思い、覚悟を決めたその時までの緊張が一気にほぐれた。
不意に涙が溢れそうになる。

和泉に不意に抱き寄せられ、優葉はとても怖かった。

しかし和泉に対し、応える態度を示せば、彼も心を開いて、何に苦しんでいたのか教えて貰えるのではないかと思い、賭けに出た。

(生徒の前で泣きたくないのに………)

必死に、 優葉は溢れそうな涙を堪えた。

その姿を見た和泉は少しだけその表情を悲痛な風に歪め、ため息をついた。

「………ったく。 本当に面倒くさい女! 泣くなよ、 教師のくせに」

「な、泣いてなんかっ………! 大体、誰のせいだとーーー」



< 54 / 660 >

この作品をシェア

pagetop