君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

「………久しぶりだね」

「そう、だね………」

「遅くなってごめん。 ………さ、俺の隣に座って。 出発するから」

「う、うん………」

そして、優葉が座ればワゴン車は出発した。

優葉は横目で李人の顔を見た。

(あの日………、 東京へ李人君に会いに行った日以来だ)

その頃の李人は、眩しいほど明るい表情をしていた。

(けれど今は………)

「………何? 優葉」

「えっ………」

「何か言いたそうだけど?」

そう言い、微笑んだ李人。 

いつもと変わらない美しいその笑顔………。
柔らかな眼差しも、変わらない。

しかしーーー

(何か………李人君の笑顔に違和感を感じる。
でも、どうしてそんなことを………私は思うの?)

「………優葉?」


「う、ううん………! 別にないよ! 李人君が元気そうで良かった………」

けれどそれでも、優葉は自分の考えを振り払うかのように李人にそう返事をした。

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