君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

「………あぁ」

何を言うでもなく、和泉はそう返事をした。
すると、女は嬉しそうに顔を綻ばせた。

「良かった………! 私、瀬名君をずっと探してたの。 瀬名君のこと………どうしても忘れられなくて。同じ大学だって知ってとても嬉しかった。 だから、もう一度やり直したいって………好きだって、伝えに来たの」

女は、そう言い和泉の手を取った。 

「………私と、付き合ってくれる? 私、 瀬名君のためなら何でもするから………だから」

「ーーー悪いけど」

和泉は、その女の手を振り払った。 

「俺は、アンタが好きじゃない。 だから、付き合う気はない。 けどアンタには………悪いことをした。 期待させるようなことをしたのは俺だから」

和泉が、そう目を伏せて言えば女は目を丸くした。 
しかし、すぐさま和泉の手を再び取った。 

「ッ、 じ、じゃあ………あの子は違うっていうのっ?」



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