君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
9. 愛しさを知る時

【本当は、ずっと】


「………ただいま」

その夜、優葉は何とか午後の授業を終え帰路に着いた。 

家は暗くシンと静まり返っていた。 

「そっか………。 今日はお母さん、高校の同窓会って言ってたな………」

優葉はそれを思い出し、ホッと胸を撫で下ろした。

またこのような情けない姿を小春に見られたくは無かった。 

最近、元気になった優葉を見て一番喜んでいたのは小春だからだ。 

そうするとまた、優葉の視界が滲んできた。

「ダメ………。また、こんな姿見られたら………心配かけちゃう」

そう思い優葉は自室に駆け込んだ。 

もちろん、自室も真っ暗であったが、電気もつける気にならない。

優葉は自分の鞄と共にベッドに飛び込んだ。

「………っ、うっ………」

するともはや優葉の涙腺は限界で………涙が溢れ出て止まらない。

今までも優葉はこれでもかというほどに泣いてきた。

その全ては李人のため。 

あんなにも好きだった李人が、いなくなるのだとわかった時に………、そして傷付けられた時に泣いてきた。 

そうーーー、ただ李人のために。

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