君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

しかし、今はーーー


"ーーー先生"

"ーーー優葉"

何度も、和泉の声が頭の中を反芻する。 

和泉を思えばこれでもかもいうほどに涙が溢れ出る。

「ッ、 ーーーうぅっ………」

あんなにも優葉を支えてくれた人を、 一番に優葉の幸せを願ってくれた人を………一時の感情で傷付けてしまった。 

もう………和泉が、あの優しい眼差しと声で優葉を呼ぶことはない。 

優葉がそれをどんなに求めようと………二度と。 

「瀬名君っ………」

ーーーその時だった。

「………っ」

指先に何か固いものが触れた。 

「………?」

優葉は、それを確かめようと重い身体をベッドから起こし、明かりをつける。 

慣れない光の眩しさで目を細めながら、優葉は再びベッドへと向かった。 

ベッドはよく見ると、先ほど優葉が鞄を投げたせいか優葉の私物が散らかっていた。 

そして、優葉はある物にそっと手を伸ばす。 

「これは………」

(関本さんへ渡すプレゼント………)


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