君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「大体、本当に好きって。 あなたと俺は仕事上の付き合いしかありません。
………一体、俺の何をあなたが知ってるんですか?」
「っ、だから、橘さんは誰に対しても優しくて気遣いができてーーー」
「ハッ、優しい? 俺がですか?」
そう苦笑しながら、李人は彼女の頬を右手の指で乱暴に持ち上げた。
「っ、痛っ………」
「もしそう思うのでしたら、大きな勘違いですよ。
仕事ですから、相手にとって気持ちの良いコミュニケーションをとるのはプロとして当然です。 それを本気にしたのは、北原さんの大きな誤算ですね」
「っ、そんなっ………」
「………ああ、でもあなたと付き合うことで俺にとって大きな仕事が入るのなら、恋人のフリくらいはしますけど。
どうしますか? けして、あなたを好きになることはありませんが」
そう言って、李人は彼女に唇を寄せる。その瞬間、彼女は李人を平手打ちした。
「………ッ、なんてヤツなの………!!! この私を、北原 咲をバカにするなんて………!!!」