君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

そう怒鳴り散らすと乱暴に扉を閉め、彼女は李人の楽屋から速足で出て行った。 

「ーーー! 李人!」

それと同時に血相を変えた斎木が交代で入ってきた。

「北原 咲に何を言った!?」

「別に、いつものことですよ。 告白されましたが、丁重にお断りしました」

「丁重にって、明らかにそんな雰囲気じゃなかっただろ………」

斎木はすっかり冷めた目をした李人を見、深くため息をついた。 

李人は、仕事をする時は何も支障はない。

むしろ集中度と演技の幅がより増してきており、前よりも媒体問わず主役級のオファーが増えてきている。

しかし問題はーーー

「………李人。 女性に断る時はけして傷つけることを言うんじゃ無い。そつなく変な噂を立てられないように断るんだ。 お前ならできていた」

李人のプライベートにあった。

特に、女性関係では言い寄ってきた女性たちを言葉のナイフで木っ端微塵に傷つけることが増えていた。




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