君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「可愛い可愛い生徒が頼んでるでしょ?」
「なっ、そんな時だけ生徒っていうの!?」
「別に? 事実だし」
「本当に悪知恵が働くんだからっ………!」
「ハハッ」
優葉が、慌てながら和泉のからかいに反応するとそれが可笑しく、また和泉は無意識に笑みを浮かべる。
("あれ"があってから………誰かの前で笑う事なんて無かったのに)
優葉の前で………一番、信用ならない若い女性教師の前でそれをするなど、和泉は自身がどうにかなったのかと思った。
「もうっ………!瀬名君、酷いよ!」
「酷いのは、俺の時間を奪ったアンタ」
それでも優葉といると、"あれ"があって氷のように固くなっていた心が少しずつ温かな気持ちで溶けていくのを和泉は感じずにはいられなかった。
(良かった………。 瀬名君、笑ってる)
一方の優葉も和泉が笑顔を見せてくれている事がとても嬉しかった。
ーーーしかし、優葉は知らなかった。
「………何してるの? 優葉」
「ーーー……….李人君?」
そんな風に和やかな雰囲気の中で笑い合う優葉と和泉を………李人が驚きと共に見つけた事に。