君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
『で!? 相手は!?』
晴夏と綾子の言葉が完全に一致し、その大きな声に優葉はまた一瞬たじろいだ。
しかし、一呼吸おいて気を落ち着かせると口を開いた。
「………か、川野スクールでバイトが一緒の女の子のお兄さんなの。
その女の子は他の大学で。お兄さんは、神奈川の大学に通う4年生で………今年の夏休みに知り合った、というか」
(こ、これで誤魔化せたかな………?)
嘘をつくのが得意でない優葉がついた精一杯のシナリオ。
どうかこれ以上、相手の素性について突っ込まないでほしいと優葉は思った。
「そうなんだ。 で、そのお兄さんはもう神奈川に帰ったの? 」
「み、3日前くらいに………」
(ひーーー! 怖いよ、怖い………!)
そのような優葉の願いも虚しく綾子がすかさず質問を投げてきたので優葉は心の中で悲鳴をあげる。
しかしーーー、その後の晴夏の言葉に優葉は血の気を失った。
「………なぁんだ! あたし、てっきり橘君の事かと思ったよ! 橘 李人君!」
「ーーー!?」
(な、何で晴夏がそんなピンポイントで李人君の名前を言うの………!?)