君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「タチバナ君?誰よそれ? しかも、今、人気の橘 李人と同姓同名?」
言葉を失う優葉に構わず、 綾子は晴夏に質問する。
「その橘 李人よ。橘君は、優葉の従兄弟!中学まで、優葉とあたしと同じ学校にいたの」
「晴夏っ………!」
(そこまで言うの………!?)
と、優葉が慌てた時には既に遅く。
「えーーー!? 嘘!?」
綾子は大きく目を見開き驚愕していた。
(あぁ………、バレたよ………)
優葉は、心の中で嘆いた。
李人と優葉がイトコだという事は、2人と小、中学校が一緒だった人と近所の人達には周知の事実だ。
しかし、高校から李人が上京したのを機に、優葉はその事を一切誰にも話さなかった。
それは李人の事を想うがゆえ、李人を思い出せば辛かったというのもある。
しかし、同時に人気俳優の橘 李人がこのような小さな町の出身だと多くの住民に知られれば、あっという間にその噂は町全体に広まる。
李人がプライベートで帰省などした暁にはゆっくり休息など取れないだろう。
それをずっと懸念し、李人との事を誰にも言わなかった優葉だが、思わぬ形でそれが崩された。