君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
優葉は、そう懇請(こんせい)し綾子に頭を下げた。
「李人君には、 地元に帰ってきた時だけでもリラックスして欲しいの。だから………」
「優葉………」
そのような優葉の姿を見た綾子は、胸を大きく打たれた。
「分かった。 誰にも言わない!確かに、橘 李人の事知られたら町中の人達、一気に押しかけそうだし。 優葉の言う通りよ」
そう言って綾子は優葉に穏やかな眼差しを向け、微笑んだ。
「綾子………、ありがとう」
その綾子の笑顔に、自分の思いが通じた事が分かり優葉は安心し胸を撫で下ろす。
「いいえ。 それにしても、優葉にとって橘 李人って従兄弟だけど本当に大切な人なのね?
ビックリしたわよ、さっきあまりにも真剣な顔をして頼んでくるから」
「………え!?そ、そう!?」
(で、出来るだけ平静を装って頼んだつもりだったけど………)
優葉はそれまでの落ち着きを失いながらも何とか綾子を誤魔化そうとした………が。
「………そうそう! あたしも昔から優葉と一番親しい男といえば、橘君しか思い付かないのよ。だから、さっきの優葉の相手も橘君かと思ったんだけど?」