君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

「ーーーッ!?」

晴夏が綾子に同調したので、優葉は狼狽える。

「ま、ま、まさかっ………!」

(李人君から早く話が逸れて欲しい。これ以上、言葉が出てこないよ!)

「………そう? でもまぁ、よく考えたら橘君の従姉妹だしね、優葉。 橘君にとっても家族みたいなものか! それで恋愛関係になるって中々ないよね?やだ、早とちりしちゃった」

「あっ………」

しかし………、その後の晴夏の言葉が優葉の胸に深く突き刺さった。

(家族みたいなもの………。 恋愛関係にはならない………。)

それらは優葉にとって、これでもかというほど痛感していた事。

しかし、改めて他人に指摘されると酷く胸が締め付けられた。

(………どうして?李人君にとって私は家族で、恋にはならないと諦めている筈なのに。 どうして、こんなに………胸が痛いの?)

「………?」

(………優葉?)

心の中で李人の事を自問している優葉の悩ましげな表情を見て、綾子はその姿を不思議に思うのと同時にある疑念を抱いた。

(………優葉は、さっきの相手は神奈川にいる大学生って言ってたけど、本当はーーー)
< 86 / 660 >

この作品をシェア

pagetop