君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「………優葉」
(………色々と思う事があるのね)
綾子はそう思い、今、自分ができる精一杯の励ましを優葉へ送る事にした。
「さっきの話に戻るけど。
普通、異性として気にしてない女に突然手を引っ張って、顔を近くするなんて無いから。
多分、優葉の気持ちを知るまではって途中で止めたんだと思う。
だから、後は優葉だけよ。 その人の事、好きなんでしょ?」
「えッ!?」
綾子に、李人が優葉を異性として想っている可能性を指摘され、更に自分の想いまで見抜かれていると思わなかった優葉は、再び狼狽してしまう。
「違うの?」
「う、ううん………。 そのっ、女性として見られてると昔から思った事無くて」
「………昔? 今年の夏、初めて会ったんでしょ?」
「あっ、ち、違うの! えっと、だ、男性にそう見られてる、って思った事が無いって意味で」
(何で、今日晴夏はこんなに鋭いの!?)
晴夏にすかさず台詞の矛盾を指摘され、優葉は慌てて弁解する。
(………やっぱり、橘 李人の事を言ってたのね)
そして、綾子はそんな優葉の振る舞いを可愛らしく思いクスリと微笑んだ。