クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
私は念のためにと思い、手探りで棚のファイルを取り出し、律己くんの迎えに登録されている人を確かめた。やっぱりおばあちゃんと有馬さんだけだ。
「失礼ですが、どちら様でしょうか」
なるべく詰問口調にならないよう、やんわり問いかけたつもりだった。
だけど男性は、さっとインターホンから距離を取り。
「やはり結構です、失礼しました」
それだけ言い残すと、くるっと背中を向けて去ってしまった。
「律己くんの名前を?」
「はい」
ちょうどその直後にあった職員会議で、私はさっきの出来事を報告した。園長が眉をひそめて考え込み、「怖いわね」とぽつりと漏らす。
「単に律己くんがいることを確認したかったのか、うまくいけば連れ去るつもりだったのか…。スーツ姿だったって言ったわね?」
「はい。一見してどこもおかしなところのない人だったんです。年齢も雰囲気も、送り迎えに来るお父さんたちと変わらない…」
言っていて、はっと気がついた。
まさか…。
律己くんの、本当のお父さん?
その可能性が否定できないことに思い至り、というより一度思いついてしまえば、それ以外ないじゃないかと思えて、どっと汗が出た。
不用意な応対をしなくてよかった。目的がわからない以上、律己くんがこの園にいることさえ、私たちは肯定してはいけない。
「保護者にはこういうことがあったという掲示を出しましょう。園は登録してある人以外には絶対に園児を引き渡さないし、園児に関する情報も漏らさないと改めて知っていただくために。もちろん律己くんの名前は伏せて」
「すぐにプリントを作ります」
「お願い。私は本部に報告します」
「あの、有馬さんへの報告はどうしましょうか」
私は元から迷っていて、今しがたの気づきでさらに迷いが出たことについて園長の見解を求めた。
休み中のところに電話を入れたら、かえって不安にさせるだけの気もするし、かといってあれほどはっきり律己くんの名前が出たのに、すぐに連絡しないのもよくないように思える。
「失礼ですが、どちら様でしょうか」
なるべく詰問口調にならないよう、やんわり問いかけたつもりだった。
だけど男性は、さっとインターホンから距離を取り。
「やはり結構です、失礼しました」
それだけ言い残すと、くるっと背中を向けて去ってしまった。
「律己くんの名前を?」
「はい」
ちょうどその直後にあった職員会議で、私はさっきの出来事を報告した。園長が眉をひそめて考え込み、「怖いわね」とぽつりと漏らす。
「単に律己くんがいることを確認したかったのか、うまくいけば連れ去るつもりだったのか…。スーツ姿だったって言ったわね?」
「はい。一見してどこもおかしなところのない人だったんです。年齢も雰囲気も、送り迎えに来るお父さんたちと変わらない…」
言っていて、はっと気がついた。
まさか…。
律己くんの、本当のお父さん?
その可能性が否定できないことに思い至り、というより一度思いついてしまえば、それ以外ないじゃないかと思えて、どっと汗が出た。
不用意な応対をしなくてよかった。目的がわからない以上、律己くんがこの園にいることさえ、私たちは肯定してはいけない。
「保護者にはこういうことがあったという掲示を出しましょう。園は登録してある人以外には絶対に園児を引き渡さないし、園児に関する情報も漏らさないと改めて知っていただくために。もちろん律己くんの名前は伏せて」
「すぐにプリントを作ります」
「お願い。私は本部に報告します」
「あの、有馬さんへの報告はどうしましょうか」
私は元から迷っていて、今しがたの気づきでさらに迷いが出たことについて園長の見解を求めた。
休み中のところに電話を入れたら、かえって不安にさせるだけの気もするし、かといってあれほどはっきり律己くんの名前が出たのに、すぐに連絡しないのもよくないように思える。