クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
すっかり歩きやすくなった道を、進んでいいものか、まだわからずにいる。

一歩踏み出してしまったら、もう自分を止められない予感がして怖い。

道の先で、あなたが笑って待っていてくれる気がするから、困る。

腕をシーツの上に投げ出し、大の字になった。手の中で携帯が震え、それが穂高くんからの簡潔な挨拶であるのを横目で確認して、視線を天井に戻す。

有馬さん。

いろいろ考えてしまうのは、きっと顔を見ない日が続いているせいだと思うので。

とりあえず、会いたいです。


* * *


週明けの朝、登園ラッシュも落ち着いた頃、たまたま玄関のそばにいた私は、向こう側から誰かが電子錠を操作しているのに気づき、内側からドアを開けた。

サッシに半分隠れていたけれど、思った通り、有馬さんだった。


「あ、エリカ先生だ、よかった」


彼は私の姿を見るなり、開口一番そう言った。


「はい?」

「すみません、ちょっといいですか」


手招きされ、靴下のまま玄関の外へ出る。手を引かれていた律己くんが、にこっと笑って私に小さな包みを差し出した。


「おはよう。なあに? 開けていい?」


少し日に焼けたように見える顔が、うんうんと頷く。

細長い紙袋の中には、キャラクターのついたボールペンが入っていた。

有馬さんが苦笑いする。


「遊園地に行ったんですよ。そうしたら、これを先生への土産にしたいって聞かなくて。ほら、エプロンとお揃いでしょ」

「えっ…」


確かに私のエプロンはこのキャラクターの柄で、実を言えばエプロンだけじゃなくメモ帳もだ。大好きで集めている、というわけでもないのだけれど、キャラクターもののわりに色使いがおしゃれで、子供受けもいいし、ついつい買ってしまう、なんだかんだお気に入りのシリーズ。


「すみません、こういうの、困るとは思うんですけど。こっそり受け取ってやってもらえませんか」


申し訳なさそうに微笑む有馬さんの足元で、律己くんは期待に顔を輝かせている。私はその前にしゃがみ込んだ。
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