クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
「すぐですよ。今年度だって、もう半分終わってるんです」

「そうか…」


呆然とした様子で呟くと、彼は隣を見下ろした。


「お前、そうやってどんどんでかくなってくんだなあ」


感慨深げで、恐れ入ってもいるような声だった。

水筒に口をつけていた律己くんは、きょとんと目だけで見返す。


「いろんなものを吸い込んで、成長してるんですよ」

「そりゃ、周囲の色に染まりもするわけですね」

「はい。本当に素直に染まります。よくも悪くも」


有馬さんはふいに口をつぐみ、ぼんやり前方を見たまま考え込んでしまった。


「…俺、子供って苦手ですけど」

「はい」

「苦手っていうか、わざわざ俺のところなんか来るなよ、もっとうまく相手できる人のとこ行けよ、みたいな感じで」

「わかります」

「それはつまり、自分のなにかが子供に影響したら怖いっていう、自信のなさから来てるのかもしれないですね」

「もしくは、そうなった場合に責任を取りたくないという逃げですね」

「この流れで、いきなりそんな厳しいの、おかしくないですか?」


新たな発見をしたような、清々しく無垢な声を出していた有馬さんが、急にふてくされる。私は笑ってしまった。


「私、そこ、一回もう通ってるんで」

「通ってなお、保育士ですか」

「はい。私の場合は、自信がないというより、自分を…あまり好きじゃなかったというか。だから、私に触れられた子供たちがかわいそうだ、的な考えで」

「で、どうしました?」

「勉強しようと思いました。子供たちへの接し方を学んで、"保育士倉田エリカ"を作り上げて。それなら子供たちと触れ合うのも、許されるだろうと」


有馬さんが、組んだ脚に頬杖をついて、口元に笑みを浮かべてこちらを見ている。その後私がたどった変遷の、想像がついているんだろう。

私は種明かしに似た気持ちで、「はい、ダメでした」とうなずいた。
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