クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
「あの、有馬さん、翔太くんのお母さんと、大丈夫ですか」

「ん?」


缶をあおりながら、彼が眉を上げた。


「大丈夫ですかって、なんですか」

「以前の一件で、関係が悪くなっていたりしませんか。元はと言えば園の問題なのに…今日も、なんていうか」


有馬さんは記憶を探るように口をつぐみ、「ああ」と明るく言った。


「違いますよ、あれは。そういうニュアンスじゃないです」

「え…じゃあ、どういう?」

「『先生に迷惑かけるんじゃないですよ』みたいな感じですかね」

「私に?」


どういうこと?

眉根を寄せた私を見て、有馬さんが、あれっという顔をした。


「すみません、言ってませんでしたね」

「なにをです?」

「俺たち、海浜公園で見られてたんです。翔太くんのお母さんに」


…え。

えっ…。


「あ、先生は心配することないです。で、後日園で行き会ったとき、声をかけられて」

「なんて…」

「『あなた、奥様は?』って」


単刀直入。さすが翔太くんのお母さんだ。

私は手の中の缶が、汗ですべるのを感じた。


「そ、それで、なんて」

「俺は独身です、と答えました」

「えっ、それ、言っちゃったんですか」

「だって俺が既婚だったら、さすがに先生の立場、まずくないですか」


そうなんだけど、そうじゃなくて。

その情報は、有馬さんからしたら、できる限り人に知らせたくないもののはずだ。私の立場を必要以上に悪くしないよう、打ち明けてくれたというの。
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