after5はお手っ
「俺もずっと由枝さんに、こういう意味で触りたかった。けど余裕ないって思われんのも怖かったんです」
震える手が、そっと私の胸に乗せられる。
これで少しは安心したんじゃないだろうか。私の心臓も今、弾けそうなほどに跳ね上がってるから。
「私も・・ヒロトくんにとっては飼い主でしかないなら、気持ちを伝えたら重くなるんじゃないかと思って我慢してたの」
でももう、お互いの気持ちは分かったから。
飼い主とペットという関係は解けて、彼氏と彼女になれた。
見つめ合ってもう一度キスをして、ヒロトくんが真剣な顔つきになる。
あまりに緊張してるから、つい、お預けを解くように「よし」と言ってしまう。
するとヒロトくんはポカンとしたあと、零れるように笑って「わん!」と鳴いた。
さっき、ペットごっこはおしまいって言ったばかりなのに、あまりにしっくりくる状況に、お互いに吹き出す。
「由枝先輩。好きです」
「うん・・私も」
ぎゅうっとしがみついて目を閉じる。幸せな気持ちで抱き着いた背中は思った通りとても広くて、頼りがいのある男の子のものだった。